大阪大学大学院連合小児発達学研究科子どものこころの分子統御機構研究センター 
ブレインバンク・バイオリソース部門

発達障害・精神・
神経疾患ブレインバンク

責任者挨拶

村山 繁雄

特任教授(常勤)村山 繁雄

発達障害・精神・神経疾患
ブレインバンク

疾患の解明や治療法の開発のためには、患者さんの試料が必要です。1960年、米国に多発性硬化症ブレイン(脳)バンクを創設した故Tourelotte博士は、「ブレインバンクは疾患克服のための、患者、医師、研究者による市民運動」と位置づけており、生前献脳同意はその根幹をなします。
私は東京都健康長寿医療センタ-に、本邦初の老化・認知症拠点としての高齢者ブレインバンク(http://www.mci.gr.jp/BrainBank/)を創設しました。また、大阪での生前献脳同意登録者の支援のため、大阪大学大学院医学系研究科神経内科と国立病院機構大阪刀根山医療センター脳神経内科と協力してきました。
米国では自閉スペクトラム症親の会がスポンサーとなり、自閉スペクトラム症死後脳リソースを研究者に供与するAutism Tissue Project(ATP)がありますが、本邦ではリソース自体が皆無です。また、精神疾患の死後脳リソースも極めて乏しい状況が続いています。
私は大阪大学連合小児発達学研究科特任教授として2020年に赴任し、ブレインバンク・バイオリソース部門を創設しました。また神経内科、病理、法医学の協力の下、発達障害・精神・神経疾患ブレインバンク(Brain Bank for Neurodevelopmental, Neurological and Psychiatric Disorders: BBNDNPD)を創設しました。
高齢者ブレインバンクと協力しながら、私のライフワークである日本ブレインバンクネットワークにおける関西拠点構築の努力を、今後も行っていく所存です。

特任教授(常勤) 村山 繁雄の略歴

1954年08月
大阪市天王寺区生まれ
1973年03月
私立灘高校卒
1979年03月
東京大学医学部卒
1979年06月
東京大学医学部附属病院神経内科研修医
1981年06月
同 医員
1985年11月
東京大学医学部脳研病理文部教官助手
1988年07月
米国ノースカロライナ大学神経病理学客員研究員
1991年07月
米国医師免許取得、横浜労災病院神経内科副部長
1992年10月
東京大学医学部附属病院神経内科技官
1993年01月
東京大学医学部附属病院神経内科助教
1999年06月
東京都老人総合研究所神経病理部門室長(高齢者ブレインバンク研究部長)などを歴任
2011年04月
独立行政法人国立長寿医療研究センター特任研究員(ブレインバンク事業委託)
2020年
大阪大学大学院連合小児発達学研究科附属子どものこころの分子統御機構研究センターブレンバンク・バイオリソース部門常勤特任教授・東京都健康長寿医療センター高齢者ブレインバンク常勤特任研究員(クロスアポイントメント制度)

ブレインバンクとは

アルツハイマー病やパーキンソン病などの老化性疾患は、脳や脊髄の神経細胞がうまく働かなくなるために起こる病気です。
このような疾患の原因や病態は未だ解明途上であり、発症メカニズムを明らかにし治療法開発へつなげるために死後脳研究は欠かせません。
ブレインバンクはヒト脳を系統的に蓄積し、疾患克服のために尽力する医学研究者へ提供することにより、今後の医療の発展に貢献しています。

ブレインバンクの必要性

老年性疾患のみならず、精神疾患や発達障害の病態解明は始まったばかりです。ヒト脳疾患の最終診断には、罹患された患者様の脳組織診断が不可欠です。ヒト脳に起こっていることは、ヒト脳を直接調べることを欠かすことができず、研究によって病態を明らかにし、治療や創薬につながっていきます。
海外では日本に先立ってブレインバンクの創設と活用が始まっています。欧米の特徴は、宗教的な背景もあり生前ドナー登録が盛んで、「Gift of Hope」(希望の贈り物)、「A Legacy of Donation」(篤志の遺産)「A Brain Donation for Next Generation」(次世代の献脳)などと名付けられ、次世代の病気を抱える患者さんに希望という贈り物をするという「祈り」が込められた活動となっています。米国や英国では、国家が研究費用を支出する国家事業となっています。

日本のブレインバンク

日本では、大学病院等での病理解剖や承諾を得た方々からのリソース蓄積は古くからありましたが、一つの施設内で完結していたため疾患の種類や症例数も限定され、幅広い研究成果に結びつくことが難しい状況が長く続いていました。
日本のブレインバンク活動は、神経病理学会ブレインバンク委員会が1997年に発足して以来、学会の事業として取りくんできました。
当時は日本の研究者は欧米のブレインバンクに研究の試料提供を依頼するか、自分の施設で蓄積したリソースを用いて研究していました。
しかし、疾患の人種差は無視できず、知的財産の問題もあり、日本のブレインバンク設立の気運が高まってきたのは1999年に私がブレインバンク設立を宣言し、東大から健康長寿に赴任して以来です。
日本の病理検索のきめ細やかさは国際的にも有名で、高水準のブレインバンク構築が可能です。また、欧米では脊髄は摘出しませんが、日本では、病院学会との協力のもと、
脊髄や一般臓器も保存され精緻な診断や研究の対象としているという優位性があります。

日本ブレインバンクネット
ワーク
関西拠点

日本ブレインバンクネットワーク関西拠点日本ブレインバンクネットワーク関西拠点

大阪大学神経内科、大阪刀根山医療センターは生前献脳同意を担当し、宇多野病院の協力を得ています。
大阪大学連合小児発達学研究科は、自閉症児のゲノム、不死化細胞を蓄積されています。
また阪大法医学教室、大阪「命を守るプロジェクト」との連携で、日本版suicide bank、autism brain netの構築努力を開始しています。

発達障害・精神・神経疾患ブレインバンクは
高齢者ブレインバンクと密接な協力の元
日本神経科学ブレインバンクネットワークの
中核を形成します

日本ブレインバンクネット

目的:精神疾患脳の蓄積
班長:高尾先生(国立精神・神経医療研究センター、美原記念病院)
2021年度から関西地区として阪大と、大阪刀根山医療センターが加入。
※2022年10月現在

日本ブレインバンクネットはAMEDの援助で高尾先生を班長としています。
2020年までの齊藤祐子班長から高尾先生に引き継がれ、2021年度から大阪地区として、
阪大と、大阪刀根山医療センターが加わりました。精神疾患脳の蓄積が目的と明記されています。

精神疾患脳の蓄積精神疾患脳の蓄積

日本神経科学ブレインバンクネットワーク

精神疾患脳の蓄積精神疾患脳の蓄積

精神疾患脳の蓄積精神疾患脳の蓄積

文科省学術変革領域 コホート・生体試料支援プラットフォーム
2022-2027(文部科研費受給者支援)

東大名誉教授 井原康夫

東大名誉教授井原康夫

高齢者ブレインバンク
生前献脳同意事前登録者

日本神経科学ブレインバンクネットワークは、文部科学省学術変革領域研究費をいただいて構築しています。
オープンリソース、ブレインバンクドナー登録システムを持つこと、リソースの品質管理を行い研究者に呈示できるという3点を必須事項としています。
井原康夫博士は健康長寿OBで、当施設死後脳リソースを含むアルツハイマー病脳を用いた研究で、アルツハイマー病の解明を行い、根本治療の開発への道を作られた方です。
高齢者ブレインバンクの立ち上げ時より一貫して援助をして下さっており、ブレインバンクドナー事前登録をしていただいています。
2021年度私が阪大に移るにあたり、発達障害、精神・神経疾患ブレインバンクを立ち上げ、班長機能を阪大に移しました。